水曜日は図書室で
 文芸部のコンテスト、とはいったけれど、校内のものではない。
 校外で公募しているものだ。それを文芸部を通じてそういう募集があると知った。
 顧問の先生からも「興味があるひとは、出してみてもいいかもしれませんね」と話してくれたので興味を持ったのだ。
 それは短編の話を募集する、高校生限定のコンテスト。
 小説なんて立派なものではないけれど、小話ではある。
 実は一年生のときも、二年生のこれまでも、こういう小さなものに出したことがあるのだ。
 それらは全部、あっけなく落選となっていたけれど。だから実績なんてあるはずもなくて、堂々となんて話せなかったことだ。美久の引っ込み思案な性格も手伝って。
 どもりながら、考え、考えになったけれど、美久はそれを説明していった。
 あまり立派なことじゃない、やっぱり。
 そう思って、「だから、今回も出してみようかと思ってて、それを書き留めていたのがこれなの」と言って、終わった。机の上に置かれていたメモを指して。
 快は数秒黙っていた。美久の話が終わったのだと、その数秒で知ったのだろう。
 口を開いた。それは美久にとって、こうだったらいいなと思っていた通りのこと。
「すごいじゃないか!」
 美久はそれを聞いて、心からほっとした。
 快なら否定するはずがない。そう思っていた。でも実際に耳にするのはまったく別のことだ。
「す、すごくないよ……だって、落選ばっかりなんだから……」
 でもやっぱり自慢できることは今のところないのだった。自分は書いて、応募して、それだけで終わってしまっているのだから。
 なのに快は首を振った。
「すぐに結果が出ることなんてめったにない。それは天才だけだよ。普通のひとは何回もチャレンジしてやっと実を結ぶんだ。だから、チャレンジし続けてるってだけで、すごいことなんだ」
 それは美久のことを肯定してくれる言葉。
 じわじわと美久の胸が熱くなってくる。
 このことに関して。こんなふうに言ってくれたひとはいた。
 文芸部の友達、顧問の先生、そして留依にも少し前に話した。
 でも「すごいね!」「応援するよ」と言ってくれただけだった。いや、それだってすごいことだし、優しい言葉だし、自分を思って受け入れてくれる言葉だ。
 でもこんな、心を震わせて染み込んでくるような言葉。初めてだ。
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