水曜日は図書室で
 心臓を握りつぶされたようだった。ぎゅっと痛くなる。
 まさか快からこんなことを言われようとは。
 この状況で、『友達として』なわけはない。恋愛に慣れていなくたってそんなことはわかる。
 でもどう言ったらいいかわからない。
 いや、本当はわかる。
 だって、自分の気持ちはもうわかったのだ。
 「はい」と言ってしまえばいい。「自分も好きだった」と言えばいい。
 なのに、その言葉は美久の口からは出てこなかった。
 さっき、あかりと対峙したときは勇気を出すことができたのに、今はその勇気がどこかへいってしまったかのように。
「わ、わた、し……」
 呆然と言った。でもそこまでしか言えなかった。

 ダメ、こんなことじゃ。
 はっきり言わなきゃ。
 返事をしなきゃ。

 でも快の真剣な瞳を見つめるしかなくなっていた、そのとき。

 ドンドンドン!

 急に大きな音が入り口からした。美久は、びくんとしてしまう。
 それは快も同じだったようだ。びくっとして、入り口を見た。

 ドンドンドン!

 また叩かれた。誰かが来ているのは明らかだった。
 そしてその誰かというのはすぐにわかった。
「美久! そこにいるの!?」
「る、留依、ちゃん……!?」
 聞こえてきたのは留依の声だった。

 どうして、留依ちゃんが、ここへ。

 美久は今度、違う意味で呆然とした。
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