水曜日は図書室で
 本の話のあとは、学校の話なんて何気ない話になった。
 そこで美久は思い出す。快に話していないことがあったことを。
 用具室に閉じ込められた一連の騒動で流れてしまっていたけれど、美久の書いていた短編小説。出そうと思っていたコンテストの締め切りはとっくに過ぎていた。
 騒動の中だったけれど、早めに進めていたことが良かったようだ。
 なんとか提出締切に間に合うように出すことができて。今は結果待ち。
 快に話すのも遅くなってしまった。なので申し訳なく思いつつも、美久は「ごめんなさい、あとから報告なんてことになっちゃったんだけど……」と、事情を話した。
 快はちょっと目を丸くした。けれどすぐに言ってくれる。
「そうだったのか。あのときはばたばたしてたもんな」
 でもそのあとにすぐにこっと笑ってくれたのだ。
「じゃ、せっかくだから結果が出てからじっくり読ませてもらおうかな」
 嬉しかったけれど、美久はその期待にあわあわとしてしまう。
「そ、そんな構えられると恥ずかしいんだけど……」
「そんなことないだろ。美久の精一杯の作品だ。きっと素敵だと思う」
 美久の動揺をやわらかに否定して、肯定してくれる快。やはりとても優しいひとなのだった。
 コンテストの結果がどうなるかなんてわからない。
 正直、自信はない。ここまでずっと落ち続けているのだから。
 でも頑張って書いたのだ。
 読んでくれるのを楽しみにしている、なんて言ってくれた快に見せるのだけは……ちょっと楽しみになってしまったのだった。
< 86 / 120 >

この作品をシェア

pagetop