雪に咲く華
第1章
転校生
葵side
シーンと静まり返った廊下。既にHRが始まっているため、周りには誰もいない。
私は1人ぽつんと教室の扉の前に立っている。先生はといえば先程教室の中に入ってしまった。
現在の状況は所謂「呼んだら入ってきてください」というところだろう。
「今日は転校生を紹介します」
「おお!まじで!」
「男?女?」
先生の一言に色んな声が反応する。
正直そんな期待されても困るなぁ。私美人でもイケメンでもないし。
そんな私の心中を知ってか知らずか先生は笑顔で手招きをする。
複雑な胸の内をひとまず押さえつけ、意を決して扉を開けた。教卓の所まで行くと、こそっと「自己紹介を」と言われたので簡単に。
「水瀬葵です。よろしくお願いします」
名前を言ってから深々と頭を下げる。えらく静かだなと思っていた次の瞬間、教室の中は一気に騒がしくなった。
「すっげー美人…」
「可愛い子だなぁ」
「俺友達になりてー!」
目の前の光景と聞こえてくる会話に少し驚いだが、気にするのはやめにして自分の席に着いた。
窓側の一番後ろの席。まだクラスメイトからの視線を感じたけれど、気づかないフリをして窓の外に目を向ける。
ここ東雲高校はちょっと偏差値の高い私立校。なのに族関係者がそこそこいることでも知られる不良校でもある。
たしかこの学校には双龍のメンバーが通っていたはず。できれば関わりなく過ごしたいなぁ。
なんていう私の望みはすぐに砕かれた。
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