雪に咲く華


押し問答をしばらく続けたが、結局葵が根負けし、家まで送っていった。

のだが、目の前にあるのは高級マンション。

なるほど、コンビニで降ろせって言ったのはこういうわけか。
1人で納得し、本人には言わないでおいてやる。


「じゃあまた明日な、葵」

「はい…。あの、送ってくれてありがとうございました」


怪訝そうな顔してんのに、ちゃんとお礼は言うんだな。
ああそうだ。ひとつ忘れてた。


「敬語、なしにしようぜ。呼び方も真でいい」


俺堅苦しいの苦手なんだよな。

葵は珍しく目をぱちぱちさせて驚いている。

まあ急に言われても難しいか。


「すぐにじゃなくてもいい。慣れたらそうしてくれってことだ」

「わ、わかった。善処する」


お、意外に素直だな。てっきり絶対イヤだとか言うと思ってたのに。

マンションの中に入っていく背中を見送りながら、思わず口角が上がっていた。



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