雪に咲く華
「見えるか?さっきの道を戻ればすぐに会える。この距離ならな」
「...うん」
「でも今はダメだろ?お前のことも俺たちのことも今は話せない」
そうだね。私の我が儘だけど、できるなら知られたくない。私の正体、過去、ここに来た目的。
だから―
「ごめんなさい」
「いいよ、葵が望むことなら俺たちは構わない。でも、今度会う時は俺たちの欲し
いもんもらうから」
「え、それって...」
「じゃあな」
どういうこと?そう聞く前に電話は切れ、ほどなくしてバイクも走り去った。
なんでそんなこと言うの?どうして怒らないの?どうして、会いに来てくれたの?いろんな“どうして”が頭の中をぐるぐるまわる。
私はしばらく呆然として、出発すると颯が呼びに来るまでその場を動けなかった。