雪に咲く華
幸い校舎の中には生徒はほとんど残っていないようで、驚くほど静まり返っている。当然ながらいつも私と帰路を共にする真の姿もない。
今日からはもう、双龍の倉庫には行けないのだ。
改めてその現実を突きつけられると、どうしようもなく寂しい。
喚いて縋り付く、なんてこと私にはできない。しちゃ、いけない。
この世界に身を置くと決めたその時から、痛いほど知っている事実だった。
この日から私の日常は変わった。
朝学校に行けば靴箱に大量のごみや呪詛じみた手紙。
教室に私の机はないし、ロッカーの私物もボロボロ。端的に言えば“絵にかいたようなイジメ”だった。
「ねえ水瀬さん、ちょっとついてきてくれない?」
そう言われてトイレで水をかけられること実に6回。屋上に行けば虫やらなんやらを投げつけられ、延々と暴言を並べてくる。
曰く、
「双龍のみなさまに楯突くなんて信じられないわ!」
「大体調子に乗らないでよね。ちょっと気にかけてもらえたからって」
「身の程を知りなさい」
「この最低女!!」
などなど。
以前ちらっと聞いた話では、双龍のみんなは元々女の子たちとの接点があまりなかったらしい。
咲は姫だから仕方ないとして、何の関りもないはずの私が彼らと一緒にいたことが気に食わなかったみたいだ。
要するにこの機を利用した嫉妬の捌け口といったところか。