雪に咲く華
これが1週間も経てばすれ違いざまに足を引っかけられたり一発殴られたりとエスカレートしていく。
できるだけ回避できるようにはしているものの、全てをやり過ごすことはできない。
今日がその最たる日で、如何せん人数も多かった。
流石に一般の生徒に殴り掛かられて気絶、なんてやわな体ではないけれど数が多いと面倒くさい。
おまけに大量の水をかぶせられて最悪もいいところだったが、代わりに探していた情報が思いがけず手に入った。
「ほんとよく学校に来られるよな。双龍を裏切ったっていうのにさ」
「だよな」
「その話、詳しく聞かせていただけますか?」
「うおっ!」
「み、水瀬さん」
「私が双龍を裏切った、ね。面白いことを言う」
「本当のことだろ。他の族と一緒にいるなんてさ」
「...他の族?」
「黄牙の藤崎隼人だよ。これ、あんただろ?」
忌々しそうに吐き捨てる男子生徒に声をかければ、驚きながらも手元にある携帯を操作した後目の前に突きつけられる。
見せられたのは一枚の写真。そこには確かに私と藤崎の姿が映っていた。夏休みの最後の夜、あいつに会った時のものだ。
「...そういうことか」
「随分平然としてるんだな。裏切り者のくせに」
”裏切り者“ね。
違うけど、他の族の人と一緒にいたことは事実。否定しきれない。やっぱり一人で出歩くのは軽率だったか。
ゴスッ
思考を断ち切るかの如く左頬に痛みが走った。見れば目の前の男子たちがこちらを睨みつけている。
でもよかった。
誰も悲しい顔はしていない。恨まれるならそれでいい。
それなら私でも受け止められるから。