雪に咲く華


色々と気がかりなことがある。が、整理するのは後にしよう。今はとりあえず保健室だ。


「失礼します」

「あら、珍しいお客さんね。どうしたの?」

「制服が濡れてしまったので、乾かさせてもらえませんか?」

「まあまあ!すぐ着替えを持ってくるわ。それと手当てもしないとね」


手当て...あ、頬のことか。


「すみません。ありがとうございます」

「ささ、座って。休んでてね」


保健医の先生はこの不良校に似合わない温厚そうな人。

テキパキと替えの制服や温かい飲み物を用意してくれる姿に心なしか張りつめていた心が解れていく。


「どうぞ、ココアだけど飲める?」

「はい、大好きです。すみません、お手数おかけして」

「あらいいのよ。保健室にくる子なんて専らサボりなんだから」


ふふっと可愛く笑う先生。彼女は、ちらっと私の手元に目を留めたようだった。


「そのパーカー、誰かから借りたの?良ければ私が返しておくけど...」

「大丈夫です。これは、ちゃんと自分で渡したいので」

「そう?わかったわ。あ、保健室に来たこと理事長と遠坂先生に伝えておくから安心してね」


え、忍さんと雅輝さんに?

水瀬さんに何かあったら知らせろーって言われてるのよ、なんて笑い事ではありませんよ先生。

お願いですから黙っててください。

なんていう私の願いはあっさり打ち砕かれ、理事長室への内線が繋がれたのだった。

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