君の世界を知りたかった。
──放課後。


雨はずっと降り続いていて一向に止みそうもない。


傘持ってきてないのにな。



私は図書室に用事があったため、夏菜には先に帰ってもらった。

他の子達も、もうとっくに帰ってしまったようだ。

今日は全校生徒が部活のない日だから校内に残っているのは私くらいしかいないかな?

私は帰宅部だから、この時間帯に学校にいることはあまりない。



下駄箱の所で雨やどりでもしとこ。

いつか止むでしょ。



──ダメだ。全く止まない。


濡れて帰るしかないか。嫌だな。

諦めよう。


──ガシッ。


……え、なに?


後ろを振り返るとそこには宇佐美君がいた。

私の腕を掴んでいる。



「お前、この強い雨の中傘なしで帰ろうと思ってんの?風邪ひくぞ」

「……え、いや、大丈夫…帰れるから」

「俺が送ってく。ほら、入れよ」


は、入れって、傘の中に?

相合傘になっちゃうじゃん!




「早く入れって」



あれ?


なぜか今、過去の、悪夢のような出来事を思い出した。



ここで宇佐美君に断っておかないといやな予感がする。


その予感が的中したら私はどうなるの?


ダメだ……断らないと。



「べ、別にいいって言ってんじゃん!ほっとけよ!なんなの?好感度上げようとしてるわけ?あんたはモテるだろうけど私は全然好きじゃない。むしろ嫌い!さっさとどっか行け!」


結構強めに言ったから、これで宇佐美君は、きっと、諦めてくれるだろ。



「……っふ。おもしれー」

「……は?」

「お前、そんな奴だったんだな。もっとおとなしいと思った。」


おとなしい?

この私が?

見た目は恐そうだと言われているこの私が?


「そ、そうだよ。そんな奴だよ!だから私の事なんてほっといて1人で帰れ!」

「それは無理だな」

「わ、わっ!」


また腕を掴まれた。

そして無理やり傘に連れ込まされた。


「なにしてんのよ!離してよ!」

「ダメだ。送ってく。風邪ひいたらどーすんだ」

「あんたに関係ないでしょ!ほぼ初対面なのになんで優しくするのよ!」

「初対面だろうがどうだろうが関係ねえ。風邪ひいたら嫌だろ。」

「別にいいし!風邪ひいても」

「……お前女子だろ。女子はあんまり体冷やすと良くないしな。」

「……っ」


なによコイツ。

なんかイライラする。
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