八神くんのお気に入り
「おはよ」
後ろから声が聞こえたけど、ショックのあまり振り向けない。
「あ、佐々木くんじゃん!また同じクラスなんだ」
「うん。よろしく」
「ほら莉子、佐々木くんだよ」
そう言いながら私の肩を揺する菫。
佐々木くんだよって言われても…
「小早川さん、どうしたの?」
「お気に入りのキーホルダー無くしたんだって」
「あ、見たことある。リスのやつだろ?」
「そ。昨日まではあったんだって」
「って事は、学校に来る時に無くなったってやつ?」
「たぶん、そうでしょ」
「小早川さん大丈夫?」
うぅ…
大丈夫じゃありません。
「おーい。小早川さーん」
「ショックで立ち直れません」
伏せたまま私はそう答えた。