八神くんのお気に入り
ち、近い……。
あまりの近さに、目どころか、顔ごと逸らす型になった。
至近距離で怖いんだもんっ!
目なんか合わせらんない。
「震えてるね」
隠してるつもりだったのに
バレてる……。
「でも残念。今日は彼女になってもらうから」
“彼女”……
やっぱり聞き間違いじゃなかった。
男の子と付き合った事無いのに、いきなり彼女のフリなんて……。
経験が無い私には難しすぎる。
それに……
相手があの1番怖いって有名な彼の彼女なんて荷が重すぎる。
失敗なんて許されるわけない。
「俺の話に合わせてればいいから」
っ……。
もう、覚悟を決めるしかないんだね……。
「は、はい……」
「行くぞ」
そう言って1人で走り出した銀髪の彼の後ろを、追いかけるように私も走った。