八神くんのお気に入り
「せっかく八神と帰るんだから2人っきりで帰りなよ?」
「それじゃあ、菫が1人になっちゃう」
そんな事を言った莉子は口を尖らせていた。
「八神くんと帰るときは、いつも菫どっかいちゃうもん」
「気のせい気のせい」
私はわざとらしく、あはははって笑った。
そんな私を見た莉子は頬を膨らませ、
「もう八神くんに菫もいるって言った」
子供みたいに拗ねた。
「え?本当に??」
「言った」
「ちょ、怒んないでよ」
「だって菫が“気のせい”って言うんだもん」
「ごめんって」
「ふーんだ。一緒に帰るって言わなきゃ許さない」
何この子。
可愛いすぎ。
「帰る」
即答した私に、莉子は笑顔になった。
「やったぁ」
ほんと、可愛いって罪だ。