八神くんのお気に入り

「せっかく八神と帰るんだから2人っきりで帰りなよ?」

「それじゃあ、菫が1人になっちゃう」


そんな事を言った莉子は口を尖らせていた。


「八神くんと帰るときは、いつも菫どっかいちゃうもん」

「気のせい気のせい」

私はわざとらしく、あはははって笑った。



そんな私を見た莉子は頬を膨らませ、

「もう八神くんに菫もいるって言った」

子供みたいに拗ねた。



「え?本当に??」

「言った」

「ちょ、怒んないでよ」

「だって菫が“気のせい”って言うんだもん」

「ごめんって」

「ふーんだ。一緒に帰るって言わなきゃ許さない」


何この子。


可愛いすぎ。



「帰る」

即答した私に、莉子は笑顔になった。


「やったぁ」


ほんと、可愛いって罪だ。


< 137 / 511 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop