八神くんのお気に入り

────…



「菫、帰ろ?」


いつにも増して、嬉しそうに私の席に来た莉子。



「うん」


カバンを持って、莉子と教室を出た。



「どっかで待ち合わせしてるの?」

「うん。昇降口」


「あ、莉子、美術室に行ってくるから…」

「私も行く!」


さ、遮られた。


「そうやって逃げようとする」


莉子、怒ってらっしゃる…。



「逃げないって」

「ほんと?」

「ほんとほんと」

逃げるの諦めましたから。


「だから莉子も一緒に行こ」

「うん!」



渡り廊下を通って美術室に向かう私達。


「何か忘れ物?」

「いや、違うよ。部活で使ってた定規間違って持って帰ってて、連絡入れたら教卓の上に置いてて良いよって言われたの」


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