八神くんのお気に入り
私は漫画の原稿に使う雲形の定規をカバンから出した。
「変わった型だね?」
「でしょ。でもこの型じゃなきゃ綺麗な曲線は描けないのよ」
「へぇ…」
目をパチパチさせてる莉子。
素直に何でも受け入れて、無邪気だなぁ。
美術室の前で鍵を開けてる部活の子に会い、その子に定規を渡した。
「鍵の事すっかり忘れてた」
「先輩いつも途中参加ですもんね」
クスクス笑うショートヘアの後輩。
「あ、バカにしたでしょ?」
「まさか!先輩はヒーローですよ!先輩が来なかったら終わりが見えません」
そう言いながら後輩は敬礼をした。
それに私も敬礼で返す。
「ヒーローは遅れてくるからヒーローなのです。間に合うよう、日頃から頑張るのだぞ」
「はい!」