八神くんのお気に入り
私達のやり取りに莉子は笑い出した。
「いつもこんな感じなの?」
「わりと…」
急に照れ臭くなった私は、ポリポリと口の横をかいた。
「じゃあ、よろしく」
「はい!」
「行こ。莉子」
「うん」
来た道を引き返そうと、渡り廊下を通ろうとしたんだけど…。
そこにはガラの悪いヤンキー達がいて通れない。
最悪。
…違う道、通るしかないか。
「莉子、遠回りしよっか」
「うん…」
振り返ろうとする私達の体は、背中を押す
“誰か”
によって遮られた。
あ。
「原田くん…!」
後ろに八神もいた。
「八神くんも…!!」
「危ねぇから急に下がってくんな」
「ご、ごめ…」
原田のぶっきらぼうな口調に莉子は私のそばに来た。
「アイツら邪魔」
俯いた莉子を見て、八神は悟ったのだろう。