八神くんのお気に入り
怠そうに首に手を当て、渡り廊下を歩いて行く八神。
ガラの悪いヤンキー達の前で立ち止まった。
「邪魔。通れねぇんだけど」
ただそれだけ。
それだけなのに、そこに屯していたヤンキー達はすぐに立ち上がり直立不動の姿勢をとった。
両端に避け、道を空けた彼等は
「すみません八神さん!」
90度って言っても過言じゃないくらい腰から頭を下げている。
その光景に言葉を失った。
…はい?
何この光景。
八神ってヤクザか何かなの??
空いた道のど真ん中で、“来い”と言わんばかりに八神が振り返った。
「ありがとう、八神くん!」
そう言いながら八神の元へ走って行った莉子。
サラサラの長い髪の毛がフワッとなびく。