八神くんのお気に入り
昇降口で靴を履き替えた私達は、莉子の後ろに続き、八神の元に行く。
…え?
八神の隣に原田くんがいる。
騒ぎながら私達の隣を過ぎて行く女の子が、ドンッと音を立てて八神にぶつかった。
「痛ってぇ」
女の子を睨む八神の切れ長の目が細くなる。
ここからじゃ聞こえないんだけど、女の子がボソボソと何かを言ってた。
「ハァ?」
「ご、ご、ご、ごめんなさい!!!」
涙目の女の子は勢いよく頭を下げて、一緒にいた友達と走って逃げて行った。
怖っ!
聞こえなかったけど、きっと謝ってたんだと思う。
別に睨まなくても…。