八神くんのお気に入り
「雨が降る前に帰りたいなぁ」
階段を上っていると、そう菫が呟いた。
「今日も部活?」
「そ。あのストーカーから逃げてるのもあるんだけどね」
「ストーカー??」
「原田陸!あの金髪!」
「一緒に帰ってるの?」
「まさか!誰があんなやつと!」
どうやら4人で帰ったあの日から、菫は原田くんの事を嫌ってるみたい。
あの時すっごく怒ってたもんなぁ…。
「莉子は八神と?」
菫の言葉に私は首を横に振った。
「今日、八神くん見てないから学校に来てないのかも……それに毎日八神くんと一緒に帰ってる訳じゃないよ…!」
「何で?」
へ?
まさか“何で?”って返ってくると思わなくて、言葉に詰まる。
私は足元に視線を落とした。
だって、
だって…
「彼女じゃ…ないもん…」