八神くんのお気に入り

「傘は?」

「あ…えっと…」

「持ってねぇの?」


その言葉にコクンと頷いた。




折りたたみ傘、カバンに入ってるかと思ったんだけど…入っていなかった。



思い返せば朝、体操服を持っていくのに邪魔だったから置いて行ったんだっけ…。



朝の私を恨んでしまう。



はぁ…



菫に嘘ついちゃったよ…。




ジーッと全身を見た後、八神くんは反対側を向いて頭をかいた。




うっ…



全身びしょびしょだもんね。


靴下も泥が跳ねてる。


見苦しい姿見せちゃった…。



そう思ったら急に恥ずかしくなって、私は下を向いた。



下を向くと髪の毛からも雫が落ちてきて、気付けば足下に小さな水溜りが出来ていた。



え…


やだ…


恥ずかしくて、一歩横にズレた。




「クシュっ」

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