八神くんのお気に入り
「あ…」
晴れてはないけど、雨…止んでる。
八神くんの言う通り、今なら帰れる。
「本当は小早川さんのこと心配だから送りたいけど、これから用事あるから…」
そう言った八神くんは、ジーッと小さい音を立てて私が着ているジャージのファスナーを上まで上げた。
「だ、大丈夫だよ…!」
「悪いな」
私の頭をポンポンした八神くんは、心なしか悲しそうな表情をしていた。
「どうしたの…?」
「ん?」
「い、いや…何でも…ない…」
聞き返してくると、何だか急にて聞けないような…
聞いちゃいけないような気がしてきた…。
「気をつけて帰れよ?」
「…うん」
そう言った八神くんは私より先に神社を出て行ってしまった。
八神くん…大丈夫かな?
最近学校行ってないのか、八神くんの姿を見なくなった。
…今も…何でこんな所にいたんだろう…。
…八神くん…。