八神くんのお気に入り
「一回痛い目見るか?」
掴まれたスカーフを上から下に持っていかれ、私の身体は椅子から投げ出された。
倒れ込んだ私の前に愛菜が出てきた。
両手を広げて、私を守るように盾になる。
「や、止めてください…!」
上から見下すような態度の原田陸に、愛菜の手が震えている。
あ…愛菜…。
「そこ、どいてくれない?」
「すみません…。菫が何をしたかわからないけど…許してください。」
声を震えさせながら言う愛菜に、原田はクスクスと笑った。
「こっちの子の方がだいぶ利口だわ」
目の前にいた愛菜をトンッと横に押して、私の前に現れた原田。
「で、どーする?あの子の勇気踏みにじる気?」
…っ!
こいつ…クズだ…!!
私は強く手を握りしめた。
「一緒に…帰ります」
そう言って静かに立ち上がった私はカバンを持って、原田と美術室を出て行った。