八神くんのお気に入り
莉子の変な噂が流れた時に来た、先輩…
殴られたのか叩かれたのかわからないけど、私が気を失った…
忘れる訳がない。
できれば会いたくなかった。
にんまりと笑う彼に
足が…すくむ。
「あの時は打ったりして悪かったね」
「え…」
私に叩いたことを謝った先輩は、ヘラヘラ笑っていた。
「痛かったっしょ?」
そう言って私の頬に伸びてきた手に、ビクッと肩が上がり、体が無意識に後ずさっていた。
「だっせー、ビビられてやんの」
フンッと鼻で笑ったもう1人の先輩。
「ね、そんな怖がんないでよ?」
い、嫌だ…
顔を近付けて話す先輩が怖い。
あの時を思い出してしまう。
「や、やめてください!」
私は負けずと先輩をキッと睨みつけ、距離を取る。
それでも先輩は顔を近付けてきた。
「お詫びしたいしさ、どっか行かない?」
ドクッと大きく鼓動を打つ。
逃げろ
そう本能からの指示が聞こえた気がした。