八神くんのお気に入り
「こいつ1人だ。俺等2人なら負けねぇ」
そう小さい声で話す先輩の声が聞こえた。
「ナメてんの?」
徐々に縮んでいく距離のせいか、低い声が廊下に響く。
私達の前に止まり、顔を上げた原田は、私の肩に手を乗せている先輩の胸ぐらを掴んだ。
「まじ笑えねぇから」
真顔でそう言う原田が初めて怖いって思った。
そうだ。
あまりにも原田にムカつきすぎて、あいつがヤンキーだったって言うこと忘れてた。
「そう言えばおまえ、こいつ殴ったんだよな?」
「ひっ」
隣にいる先輩が怯えてる。
無理もない。
原田の殺気を放った瞳に、私も恐怖心を抱いた。
「同じやり方でお詫びしねぇとな」
言い終わると同時に鈍い音が聞こえた。
廊下に倒れ込む先輩の姿に、怖くなった私は何歩か後ずさった。