八神くんのお気に入り
「やめて!」
私はもう一度そう叫んで先輩の腕を引っ張った。
その瞬間、先輩は私の髪の毛を乱暴に掴んだ。
「い、痛っ!!」
「邪魔ばっかして懲りねぇ女だなぁ」
「いっ…!!」
私は、痛みで思いっきり目を閉じた。
「大人しくついて来ればいいものを…!」
ギリッと髪の毛を掴む手に力が込められる。
「痛っ離して!」
「後で可愛がってやるから待ってろよ」
途端、ガッシャーンという破壊的な音に、髪の毛を掴む力が弱まった。
目を開けると、
教室と廊下の間の窓、室内窓が割れていた。
原田を拘束していた先輩は、驚いたのか、尻餅をついてる。
「は、らだ…?」
室内窓に向かって伸ばしたままの原田の腕から、血液がポタリと床に落ちた。
飛び散った窓ガラスの上に落ちていく血。