八神くんのお気に入り
先輩の右手、血が付いていた。
原田を殴った時に付いた血を八神は見つけたのだろう。
「ひっ」
殺気を放った目に、先輩は情けない声を出した。
パッと胸ぐらを掴んでいた手を離した瞬間、八神が先輩を殴り、吹っ飛ばしていた。
「2度と俺等に近付くな」
そう上から発せられる声に、バタバタと逃げるように走って行った先輩達。
「菫!」
いつの間にか莉子が私のそばにいた。
莉子の顔を見ると安心して
莉子だ
莉子だ…
零れそうな涙をグイッと拭った。
「原田!」
倒れている原田に声をかけた。
真っ赤に染まった腕と床。
近付こうと動かない体を動かすが、八神の腕が私の前に来て行手を阻まれる。
「待て」
「八神、原田が…!」
必死に動かして、八神の腕を退けようとする。