八神くんのお気に入り
「取り敢えず、病院に連れて行きましょう」
「救急車呼んできます」
そう言って、1人の先生が立ち上がり、職員室に向かって行った。
「後は私達に任せて、君達は帰りなさい」
「っ…」
その言葉に何とも言えない感情が全身を巡った。
原田を置いて、帰れない…。
頭の中にあるのは、ただそれだけだった。
でも、そんな事言えるなんて思わなくて、私は下唇を噛んで俯いた。
「俺も行く」
不意に聞こえた声に私は顔を上げた。
「何を言っているんだ君は!」
「どーせ原田の親には連絡がつかない。他にコイツを知ってるのは俺だ」
先生は一瞬悩んだ様子を見せ、ため息をついた。
「わかった。今回だけだからな」
もう一度ため息をついた先生は、私達を見た。