八神くんのお気に入り
「君達は帰りなさい」
「私も…!」
「ダメだ。遊びじゃないんだぞ」
わかってた。
怒られる事なんて。
わかってたけど、私だって遊びじゃない。
無力な自分に情けなくて思う。
私は床についた手を握りしめた。
「俺がついてるから安心しろ」
八神の声が、いつもより優しく聞こえて、目に涙が浮かんできた。
もう、八神にしか頼めない。
涙が溢れないように下唇を噛んで、
涙がバレないように下をむいた。
「原田を…お願い…」
振り絞って出した声は震えていて、情けなかったと思う。
それでも八神は
「任せろ」
って言ってくれた。
すぐに来た救急車に乗せられて、原田達は行ってしまった。
一瞬の出来事だった。