八神くんのお気に入り
「……」
『なんてね。はは、今の言葉忘れて』
ほらな。
って、言いたかった。
でも、あいつの声は元気がなくて、さっきの言葉は本心なんだって思った。
何で。
何でなんだよ。
俺を嫌ってんだろ?
ならほっとけばいいだろ?
何で連絡してくんだよ?
何で後悔してんだよ?
何で、
何で…!
「明日、」
『うん。またね』
「無理やり連れて行く」
は?
『…え?』
「じゃ」
『ちょ、八神、待──…』
そう言ったのを最後に、声は聞こえなくなった。
「勝手に決めんな」
八神に背を向けたまま、そう小さく呟いた。
「いつまで腹立ててんだよ」
「立ててねぇ」
はぁ。と、小さいため息が聞こえた。