八神くんのお気に入り
俺と同じ制服を着たやつが何人か歩いてて、目の前の道路を走る車。
周りを見ても変わった様子はなく、いつもと変わらない風景だ。
…ん?
道路を挟んで向かい側の歩道。
見覚えのある銀髪に、つい名前を叫びそうになった。
八神のやつ、今帰ってんだ。
八神の隣には小早川さんがいた。
…は?
一緒に帰ってたんじゃねぇの?
ちょっと待て。
どういう事だ?
いつも3人で帰って、途中からあいつが本屋に行って抜けてた。
でも今は違う。
俺の横を通ったのはあいつだけで、先にあいつが本屋に来た。
そんな事を考えると、いつの間にか本屋から離れた距離にいる2人の姿は小さくなっていた。
「……!」
店から出てくる人影に、俺は物陰に隠れた。
本屋から出てきたのは、あいつ…菫だった。