八神くんのお気に入り
「血が止まんなくて、弟も泣いてて、
私、どうすればいいのかわかんなかった。
犬から遠ざけたかったのに、追いかけてくるから怖くて…逃げ回って、弟の腕を引いて家の中に入った。
そしたら玄関で弟が倒れたの。
顔が真っ青で、服は赤く染まっていた。
怖かった。弟が死んじゃうって…
私が大泣きするから、近所のおばさんが不思議思って家に来てくれたの。
その後の記憶が無いんだけど、気付いたらお母さん達と病院にいた。
縫うほどの大怪我で、お母さん泣いてて…
ベッドで眠る弟を見て思ったの。
私が“助けて”って言ったばっかりに、弟が怪我をした。
私がしっかりしなかったから。
お姉さんなのに…
守らなきゃいけないのに…
だから、みんな悲しい思いしてる。って。
お母さんは弟に付きっきりで、退院するまで私はいつもお父さんと一緒で。
弟と遊べない。お母さんに会えない。
小さいながら色々考えてさせられた…
みんなでいたいんだったら、私がしっかりしなきゃ。
泣いてばかりじゃダメって…」