八神くんのお気に入り
八神くんの嘘
夏休みに入ってもう半分過ぎた。
今日は土曜日。
菫と約束した、花火大会の日。
「莉子ー、もう準備したの?」
「もう少しー!」
階段から私の部屋に向かって叫ぶお母さんに、そう返事を返して鏡の前に立つ。
お母さんが浴衣の着付けをしてくれる前に、自分で髪の毛のセットを始めたんだけど…。
「んー大丈夫かな??」
顔を左右に動かして、頭の上で作ったお団子を確認する。
前々からどんな髪型が良いかスマホで調べていた。
“定番のお団子もゆるっと崩せば、こなれた感じに”
そのキャッチフレーズに惹かれ、この髪型にしたんだけど…
変じゃないかなぁ…??
もう一度、左右に動かして確認する。
“祭りの間、絶対手離さねぇから”
八神くんに言われた言葉を思い出して、顔が熱くなるのがわかる。
その顔を鏡で見て、余計に顔が赤くなる。