八神くんのお気に入り
「おまた〜」
みんなとの待ち合わせ場所に着く頃には、空が少し薄暗くなっていた。
「遅〜い!2人待ちだよ?」
「ごめんごめん、浴衣歩き難くてさ」
そんな会話をしている菫の後ろから顔を覗かせた。
八神くん…いない…?
辺りを見渡しても八神くんの姿は無くて…
え…来ないのかな…?
八神くんがいないと思うと、寂しいというか…ショックというか…。
「……」
楽しみに…してたのになぁ…
菫の後ろに隠れて俯いた。
その瞬間、手に温かいものが包まれた。
「っ!?」
ビックリして振り返ると…
「八神くん…!」
手を握ったまま、八神くんが私を見つめた。
ドキッ
「みんな集まったし、屋台でも行くー?」
「行こ行こ!」
クラスメイトの声に、八神くんはそっぽを向いた。