八神くんのお気に入り
いなく…なっちゃった…
私を避けるように人が通る。
何も考えられなくて…
考えたくなくて…
ポタッと涙が地面に落ちた。
「莉子?」
聞き覚えのある声に私は振り返った。
「やっぱり莉子じゃん!」
そう言って私のそばに駆け寄ってきたのは菫だった。
浴衣なのにしゃがんでくれて、私と目線を合わせる。
「こんな所で何してるの?八神は?」
目をまんまるにして、驚きを隠せていない菫。
「はぐれ…ちゃった…」
「携帯は?」
頭を横に振る私。
「知らないの!?」
その言葉に頷いた。
「も〜いつも一緒にいるんだから交換くらいしときなさいよ」
はぁ〜っと、ため息をつく菫を見ると、余計に涙が溢れてくる。