八神くんのお気に入り
屋台が続く道。
言われた通りすれ違う人の顔を確認するんだけど…
人が多すぎる。
それに、暗くなってるせいもあり…わかりにくい。
みんなを見ることなんて出来ない。
八神くんっ…
「手分け…しようか」
菫が下唇を噛み締めていた。
苦渋の選択だったんだ…。
そうだよね…こんだけ人が多いんだもん。
別々に探すと…途中で合流するのは難しい…。
「携帯持ってきてるよね?」
「う、うん」
「それで連絡を取ろう!」
「うん…!」
「じゃあ、気をつけてね?」
そう言って、菫は人混みの中に消えて行った。
菫…真剣な表情だった…。
あんなにオシャレして可愛かったのに…
クラスメイトのところに行かないで八神くんを探してくれてるなんて…
せっかくの浴衣が台無し…。