八神くんのお気に入り
私のせいだ…
しっかりしなきゃっ…!
私が頼りないから、菫が心配する。
菫の時間を奪っちゃダメだ!
菫は、八神くんを探すために夏祭りに来たんじゃないっ…!
頑張れ、私。
両手でほっぺたを叩いた。
「よしっ」
人と人との、少しの隙間を通って前に進む。
八神くんっ…
浴衣で思うように歩けなくて…
履き慣れてないゲタに足が痛む。
でも、八神くんに会いたい。
八神くん…どこにいるの?
当ても無く、ただただ銀色の髪の毛を探す。
それが…この人混みの中で八神くんを探す唯一の手段。
ドーンッと大きい音が響くと、周りから歓声が沸いた。
「…え…?」
顔を上げると、空には大きな花火が打ち上がっていた。