八神くんのお気に入り
始まっ…ちゃっ……た…。
真っ暗な夜空に打ち上がる花火に、みんな早足になっていく。
あんなに人が沢山いた道も、今は屋台に並ぶ人が少しいるだけで…。
ドーンッと、また音が聞こえる。
「八神くんっ…」
空に上がる花火はとても綺麗で…
八神くんと一緒に見るんだと思ってたから…
大きな穴が開いたみたいに心が潰されそう。
「っふぇ…」
涙で花火が見えなくなっていく。
八神くん…
どうして…手…握ってくれなかったの…?
手を伸ばしても届かなかった八神くんの背中。
その時改めて思い知らされた。
私と八神くんの住む世界は、違うんだって。