八神くんのお気に入り
「ごめん、手離さねぇって言ったのに…」
「八神くんっ…どっか…私の知らない所に…行っちゃうんじゃ…ないかって…」
「そんな事しねぇって」
八神くんの声が優しくて、余計に涙が出てくる。
「1人にしてごめん。泣かないで」
そう言って、八神くんは親指で涙を拭き取ってくれる。
その手も優しくて…
また離れて行くんじゃないかって
届かない場所に行くんじゃないかって
不安が募っていく。
ポタッと私のほっぺたに冷たいものが落ちてきた。
「ひゃっ」
「あ…わり」
そう言って私から少し離れた八神くんは、腕で汗を拭った。
八神くんの額から汗が滴れていて、息も少し荒い。
…え?
「八神くん…探してくれてたの…?」
「は?当たり前だろ」