八神くんのお気に入り

屋台から少し離れた場所に移動して、八神くんが焼きそばを出した。



「ん」

「あ、ありがとう…」


…焼きそばのこと…忘れてた…。



その場に座り込み、焼きそばを食べ始めた八神くんの隣に腰をおろす。



梅雨の時期に、菫と焼きそばの話をした。



私は焼きそばを一口食べる。



想像通りにはいかなかったけど…



へへ


やっぱり美味しい。




ドーンッと響く音に、空を見上げた。





次から次へと打ち上がる綺麗な花火。



「綺麗…」



真っ暗な夜空に浮かび、一瞬でその輝きは消えてしまって…


なんだろう…

すごく切なくて…涙が出てくる。



「は、どうした?」

「わかんない…けど…涙が止まんなくて…」


そんな私を見て、八神くんは私のほっぺたを撫でた。


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