八神くんのお気に入り
「心が綺麗なんだろ」
「え…?」
「綺麗なもん見て涙を流す。心が綺麗な証拠だろ」
え…?
八神くんの表情がどこか寂しげて…
まるで、神社で雨宿りした時と同じ…あの時の表情…
「やが…」
♪♪〜
急に聞こえた着信音に肩が飛び上がった。
「ご、ごめん…私の」
急いで携帯を取り出すと、ディスプレイに表示されていたのは菫の名前。
「あっ!!!」
思わず携帯に向かって叫んでしまった。
菫のこと忘れてた!!
私は急いで通話ボタンを押した。
「もしもし、菫…」
『八神いた?』
「うん。いる!」
『“いる”?今一緒にいるの?』
「あ、うん!」
『良かった〜』
携帯越しに聞こえてくる菫の安心した声に、菫のことを忘れてた私はほんと申し訳なく思う。