八神くんのお気に入り
私達も帰らなきゃ…
そう思って立ち上がった私は、八神くんに手を掴まれた。
ドキッ
「もう少し一緒にいよう」
「へ…?」
銀色の前髪の隙間から、上目使いで私を見つめる八神くん。
「ダメ?」
そんな可愛い顔して言ったら…断れないよ…
私は再び八神くんの隣に座った。
「どうしたの…?」
八神くんは真っ直ぐ前を向いたままで、何も答えなくて…。
そんな八神くんを見て、私も八神くんと同じように前を見た。
帰る人が歩いてて…
“楽しかったね”
“花火綺麗だった”
“また来よう”
そんな話し声が聞こえた。
今日の思い出。
ふふ、
その様子を見ただけで楽しかったんだってわかる。
私の手を覆い被すように、優しくキュッと握られた手。
その手はどこか寂しげで…
…?