八神くんのお気に入り

テツさんと話すのに夢中になってた俺は、莉子を置いていってしまった。



自分で“手を握る”とか言っておきながら…。




俺は自分の手の平を見つめ、やってしまった後悔に手を握り締めた。





振り返っても莉子がいない。



すっげぇ怖かった。




心のどこかで、莉子は俺から離れないって思ってたから…。




いつか莉子も俺の前から居なくなってしまうんじゃないかって。


そう思った怖くてたまらない。



莉子はそんなやつじゃねぇってわかってんのに、今までの経験に囚われてしまった俺は、その恐怖に勝つ事が出来なかった。




だから莉子にあんな態度を取ってしまった。




「大事な人を作らなかったら失うもんも無い…」




だから頼む。



頭の中で残る残像を…

莉子の泣き顔を消してくれ。




俺を助けたいって泣きながら言った莉子を。




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