八神くんのお気に入り
その瞬間、体が前に持っていかれた。
よろけた私はビックリして目を開ける。
「…え?」
そこには座ったまま私を抱きしめる八神くんがいて…。
「怖がらないでくれて、ありがとう…」
八神くんの声が震えていた。
八神くん…初めの頃、
私に“お願いだから、怖がらないで”って言った。
その時、八神くんの弱い部分に触れた気がして…ほっとけなくて、友達になった。
もしかしたら八神くん
その時には、もう…
助けを求めていたのかもしれない。
「ごめん…ごめんね。気付いてあげられなくて…」
泣きながら謝る私に、抱きしめる八神くんの力が強まる。
「ごめん」
やっぱり八神くんの声は震えていて…
「莉子にそんな事言わせて…」
弱々しかった。