八神くんのお気に入り

辛かったよね…


苦しかったよね…




抱きしめる腕が離れ、八神くんが私の頬を撫でた。


その手がとても優しくて…


「何で莉子が泣くんだよ」


私を見つめる八神くんの瞳も、優しかった。




「もっと早く八神くんと出会ってたら…1番辛い時期にそばにいることができたのに…」

「もういいよ、莉子。莉子の気持ち充分伝わったから」



「莉子」

そう私の名前を呼んだ八神くんは、私を抱き抱え、一緒に立ち上がった。


「せっかく立たせたのに、また膝を着けて」


声は優しいのに、ちょっぴり怒ってるような口調で、私の膝に付いた砂を落としてくれた。



私が勝手に膝を着けただけだから…!


しゃがみこんだ八神くんに慌てて手を伸ばすと、ギュッと手を握りしめられた。



ドキッ


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