八神くんのお気に入り
私の手を握りしめたまま立ち上がった八神くんは、真っ直ぐ私を見つめる。
そんな八神くんにドキドキしてしまって…
私は握りしめた八神くんの手を見つめた。
「好き」
…、え?
気の…せい…?
今、好きって聞こえた気が…
八神くんの顔を見ると、変わらない瞳で私を見つめてて…
え…?
やっぱり、気のせい…?
「莉子が好きだ」
今度は私の目を見て、そう言った八神くん。
八神くんが…私を?
う、嘘…。
ドキドキと鼓動が早くなる。
八神くんは握りしめた私の手をなぞり、スルリと指を絡ませた。
それにまたドキドキして…
「あ、葵さんは…?」
とっさに出た言葉に後悔する。
聞くんじゃなかったと。
あぁ…
私なんて事を…