八神くんのお気に入り
「でも逃げなかったんでしょ?」
「ん…途中で逃げ出すのは嫌だったから…」
モゴモゴと言う私に菫はまた笑った。
「ほんと良い子だよね、莉子って。私だったら無理だわ」
「私だって嫌だったよ…」
「八神ー」
ビクッ
突然聞こえた声にビックリして肩が飛び上がった。
外から聞こえた声の主は、金髪ヤンキーだ。
私達の目の前を通る、金髪ヤンキーの姿を追った。
「こんなところで何してんだよ?」
「別に」
銀髪の頭が見えた瞬間、鼓動が大きく聞こえた。
急に目の前に現れる銀髪の彼。
近くで聞こえる声…。
いつからそこにいたの…?
もしかして全部聞こえてた…?
そう思うと恐怖心から動けなくなっていた。