八神くんのお気に入り
「ま、待って…!」
勢いよく席を立ち、筆箱とプリントを握りしめた。
佐々木くん、どこか嬉しいそうな表情に見えたのは……気のせい…?
そう思いながらも私は佐々木くんの後を追いかけた。
あ…
八神くん…どこにいるのかな??
終わったって連絡しなきゃ…
佐々木くんの後ろを歩きながら、ポケットに入れた携帯を取り出そうとした時だった。
「ねぇ小早川さん」
声が聞こえ、顔を上げると佐々木くんがいつの間にか振り返っていたんだ。
「は、はいっ?!」
ビックリしてしまい声が裏返ったことに恥ずかしくなり、私は慌てて口を押さえた。
「どうしたの?」
クスクスと笑う佐々木くんは笑い方も綺麗。
「いや…ビックリしただけで……」