八神くんのお気に入り
「でも莉子が、俺の為に悲しむなら……そいつを許さねぇ」
真っ直ぐ向けられた瞳は、あの時“俺が守ってやる”って言ってくれたのと同じで…
大人。とか
頼れる。とか
男の子だ。とか
かっこいい。とか
言葉じゃ表せない。
「莉子」
ソッと優しくほっぺたに添えられた手に、ビクッと身体が反応した。
「嫌なら逃げて」
薄暗くて静かな踊り場。
至近距離で八神くんの瞳が真っ直ぐ私を捕らえる。
心臓がドキドキして……私はゆっくり目を閉じた。
“次するときは甘いやつしてやるよ”
その言葉通り、八神くんの見た目に想像出来ないくらい甘くて優しいキスだった。