八神くんのお気に入り
────…
「…さん、小早川さん!」
「へ?」
「聞いてる?小早川さん」
「あ…えっと…」
あれ…?
気付いたら銀髪の彼と中庭のベンチに座っている私。
人が1人、入るくらい空いている距離。
えっと…
もしかして私…恐怖心のあまり、放心状態で歩いてたのかな…?
どうやってここまで来たのか覚えていない。
「昨日は無理言って………ごめん」
「っ…!」
無言のまま私は首を振った。
「俺の名前知ってる?」
「へ?名前…?」
「うん」
知ってるも何も、銀髪の八神って有名ですよ…?
私が何も言わなかったから、銀髪の彼は先に口を開いた。
「八神って呼んでいいよ」
「…へ?」
「別に名前呼んだくらいで怒んねぇよ」
や、やっぱ聞かれてたんだー!!
私が気安く名前なんて呼べないって言ったから…!
「小早川さんなら楓でもいい」