八神くんのお気に入り
『着いたわよ。どこにいるの?』
「い、今から行く!」
『そう?正門近くにいるか』
「はーい」
携帯をポケットに入れ、……八神くんを見つめた。
「ん?」
私が心配しなくても…八神くんなら大丈夫って思うけど……。
でも…
気になるって言うか
心配してしまうって言うか
また…いつどこで、八神くんに罪がかかるのかと思うと……
……離れたくない。
「俺なら大丈夫だから」
そう言った八神くんは私の頭を優しく撫でてくれた。
「……」
いろんな想いが込み上がって、胸がキュウッてなる。
「親が待ってんだろ?」
「…うん」
「来週は学校に行くから」
「…うん……また、来週…」
「ん」
八神くんの手が私の頭から離れる。
名残惜しいけど……
「バイバイ」
そう言って、車に向かう私は何度も何度も振り返った。